雑誌「世界」12月号
2005年 11月 10日
ところで、普段は、自分の狭い専門分野の文献以外には、総合雑誌の類をあまりゆっくり読む機会がないのですが、今回は折角の機会なので、この「世界」12月号の他の論文や記事にも目を通してみました。その中から、いくつかの感想めいたことを記しておきます。
第1は、本号が「米軍再編の真実―日本が前線司令部になる日」という特集号になっていますので、まずは「在日米軍」の存在とその現実、そして最近における再編の動きについて、事態の深刻さを改めて思い知らされました。たしかに、米軍基地の再編問題は、一般のマスコミにも報じられていますが、沖縄を含む基地周辺の人々の敏感さを別とすれば、国民一般の関心事とはなっていないのが現実です。その壁をいかに乗り越えるかが今後の課題です。
第2は、改憲問題の高まりですが、現行憲法9条が自衛隊の「自衛軍」への移行を許さない楯になっていることを確認するとともに、9条があるからこそ、日本外交は「9条の制約」を理由に米国に抵抗することができているという側面にも目を向けるべきだという提言に惹かれました。ここでも、米軍との関係を意識すべきことが示唆されています。
第3は、いわゆる靖国問題ですが、ここでは靖国神社参拝が単に「違憲」だと判断されるべきであるだけでなく、遺族の同意も全くないままに戦犯とともに「合祀」を強いられ、取り下げも許されないという権力的な措置を糾弾し、救済を求めて行くという動きです。この点については、必ずや国民一般の支持が得られると思います。
そして、以上のような批判的なアプローチは、小泉流の弱者切捨てではなく、市民による協同と連帯運動の再生以外にはないとする論調に同感しました。