「強制わいせつ」と「卑猥な言動」
2005年 10月 20日
まず、刑法上の「強制わいせつ」罪は、13歳以上の男女に暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をし、また13歳未満の男女にわいせつな行為をすることで、6月以上7年以下の懲役に処せられます(176条)。ここで「わいせつな行為」とは、人の性的羞恥心を害するような行為をいい、暴行・脅迫によって強制するという点に特色があります。実際には、無理やりにキスするとか、乳房や陰部などに触れるなどの行為がこれに当たるとする判例がありますが、相手の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要であると解されています。
一方、迷惑防止条例上の「卑猥な言動」は、公共の場所や乗物の中で人を著しく羞恥させまたは不安を覚えさせるような卑猥な言動をすることで、府県の条例の中には、女子の衣服の上からまたは直接身体に触ることや、身体を覗きまたは写真をとるなどの行為が例示されています。違反に対しては、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されています。ここでは、公共の場所や乗物の中という限定がある一方で、反抗を困難にするという強制的要素は含まれていません。したがって、まずは、行為の場所で分けた後、人に対する強制の有無を考慮した上で、重なる場合には、程度によって、相対的に重い刑法犯か、軽い条例違反行為かを区別するということになるでしょう。