ハッセマー教授の講演
2005年 10月 03日
講演の内容は、いずれ日本語に翻訳されて公表されることであろうが、ここでは若干の感想を述べておきたい。
教授によれば、ドイツでも、最近は新しい形態の犯罪の出現と増大に対処するための新しい犯罪の創設および刑罰の拡大と強化という顕著な現象がみられ、それらはこれまでの伝統的な刑事法の「法治国的原則」を脅かしつつある。そして、この方向を支えているのは、明らかに、犯罪の予防、被害者の保護、および統制の強化という観念であるという分析がなされている。
問題は、教授がこれらの現状を認めながらも、それが「拷問の禁止」というテーゼまで相対化するというのであれば疑問であり、そこには「人間の尊厳」という憲法上の厳しい「限界」がなければならないとした上で、結論的にはドイツの「法文化」(Rechtskultur)が有効な基準たり得るであろうと主張されたのである。
その「法文化」とは何か、という問題はなお残されているが、ドイツでは、連邦憲法裁判所の副長官が、法治国原則の相対化の「限界」づけという問題意識を明確に提示されているという点は、わが国の状況を考える際にも、真剣に参照すべきであろう。
なお、私は、「法文化」の性質について質問したほかに、現在問題になっている「共謀罪」の立法化に関するいくつかの質問を「文書」で教授に手渡した。回答は後日にメールでということになったので、しばらくその返信を待ちたいと思う。返信がきたら、またその内容はこのブログにも紹介したいと考えている。