最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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9月2日の京都新聞

 「共謀罪」について京都新聞から依頼されていた原稿が、9月2日の朝刊に出ましたので、その内容をブログに転載しておきます。
 「共謀」とは2人以上の者が特定の犯罪を行うことを「合意する」ことをいい、それだけで処罰するのは現行の刑法では内乱等の「陰謀罪」があるだけだ。大半の犯罪は、例えば殺人罪では、▽人が死亡する(既遂)▽死亡する危険がある(未遂)▽殺人の用具を購入する(予備)-といった外部的な行為がなければ処罰されない。ただし殺人の「共謀」に参加した者は、そのうちの誰かが共謀した犯罪を実行した場合には処罰されることがある(共謀共同正犯)。しかし今回の「共謀罪」はこの原則をこえて重大犯罪の「共謀」だけで処罰するというものである。
 この法案はそもそも「外圧」的なものだ。国連の「国際組織犯罪防止条約」(2000年11月採択、03年9月発効)をわが国が早々と03年5月に国会で承認したため、この条約に伴う国内法の整備として提案された。国際協調という大義名分があり「法制審議会」も通過したのでスムーズに行くかと思われたが、03年の国会で廃案となり、04年の国会でも審議入りできず、05年の国会でようやく審議入り。それも郵政解散で再び廃案となった。最近では政府が提案する刑事立法の改正(犯罪化・刑罰化)はすぐに通ってしまうという傾向が強いだけに、これは異例の展開である。
 その異例さは05年7月12日の衆議院法務委員会の議事録を見れば直ちに判明する。この種の法案審議は通常、野党議員の質問に立案当局者が形だけの答弁をし、与党議員の多数決で採決という手順で終わることが多いが、この日の審議はまるで違っていた。まず共謀罪を取り上げた与党議員(4人)がすべて何らかの意味で法案に疑問を呈しており、これは実に驚くべきことだ。しかも答弁側に立った法務大臣政務官が個人的には本法案は「政治的には悪法であると思っている」ことを公言するなど、予想を絶するスリルを含んでいる。
 法案には4つの疑問点がある。
 第1は本法の対象が「組織犯罪集団」に限定されず、市民団体や労働組合も含まれるのか、という点だ。当局者は含まれないと答弁したが、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」という法文からはその限定が見られない。
 第2は「共謀」しただけでは不十分で、何らかの「外部行為」(overt act)を必要とすべきではないかという点であったが、当局者は不要であるとして譲らなかった。
 第3は対象となる「重大犯罪」が600以上にもなるというのでは共謀の原則処罰になるのではないかという疑問であったが、結局、4年以上の法定刑の罪は全部入るとされた。
 第4は「越境性」が不要とされている点だ。条約の審議過程を示すために国会に出された文書が外交機密を理由に「黒塗り」であったため、経緯の開示の必要性が顕在化することになった。
 英米やドイツ、イタリアなどの主要国がいまだ準備段階にあるのに、なぜわが国がこのような重大な問題について急いで矛盾に満ちた法案の強行採決を図ろうとしているのか。その基本的な姿勢に重大な疑問を感じざるを得ない。
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by nakayama_kenichi | 2005-09-02 10:29