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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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共謀罪の立法化

 一定の犯罪に当たる行為を「団体の活動」として「組織により」実行しようと共謀すれば、それだけで処罰するという「共謀罪」を新しく立法化するための法案が、現国会に上程されている。
この法案は、2003年の国会に提出されたが廃案となり、2004年にサイバー犯罪対策と併せて提案されたが、審議入りできなかったという経緯がある。
 この法案に対しては、野党のみならず、与党議員の中からも、処罰範囲が広過ぎるので、組織的犯罪集団に限定するとか、少なくとも何らかの準備行為が必要ではないかといった疑問も出されており、今国会での成立は困難で、継続審議になる可能性が大きいといわれている。
 この問題については、新聞誌上にも批判的な観点からの解説がなされてきていたが、中でも、2005年7月29日の朝日新聞朝刊が、「共謀罪の是非を問う」というテーマで、椎橋隆幸氏(中央大學教授)と、海渡雄一氏(弁護士)との対談を掲載してのが注目される。その内容のコメントをする前に、ここでは、刑法学会ないし刑法学者の対応という点を指摘しておきたい。
 以前に、刑法の法定刑の加重案が問題になった際に、刑法学会がきわめて冷淡で無関心であることを批判したことがあったが、今回の共謀罪の新設に関しても、その対応は変わっていない。刑法学者有志の反対声明は出ているが、学会で本格的な討議が行われた形跡はなく、むしろ回避されているようにさえ見えるのは、何としても問題であるといわなければならない。
 しかも、この法案も事前に「法制審議会」を通過しているのであるが、上の椎橋教授をはじめ何人かの刑法学者が委員・幹事として参加し、賛成しているにもかかわらず、この問題に関する本格的な論文が公表された例を聞かないのも不思議である。私自身は、この問題についても、法制審議会の議事録(匿名!)を検討し直さなければならないと考えている。
by nakayama_kenichi | 2005-07-28 12:07