法定刑の引き上げと量刑の動向
2005年 04月 29日
その内容の検討は別の機会に譲るとして、とりあえず以下の3点を指摘しておきたい。
第1は、法定刑の上限の引き上げについて、刑事裁判官がほぼ一致して歓迎しているとされている点である。これは、裁判官の量刑選択の幅が広がるという理由によるが、一律に法定刑の上限が引き上げられても、量刑相場は守られるといってよいのかという問題がある。
第2は、法定刑の下限の引き上げについて、強姦はともかく、殺人についてはその理由に乏しいことが明言されている点である。これは、立法趣旨が国民の正義感からのメッセージに由来するもので、量刑実務の感覚とは合わないことを示している。
第3は、強盗致傷罪の下限が引き下げられたことが、実務上の長年の懸案を解決するものとして歓迎されている点である。しかし、これは最初の立法提案にはなかった別の附帯決議によるものであり、国民の規範意識へのメッセージ性とは逆方向のものである。
裁判所や裁判官が、実務上の量刑相場を維持するという心意気を期待したいが、今回の立法者の改正趣旨が検察官の求刑を通じて裁判所の実務にも影響してくるおそれは十分にあることを予想しておかなければならないであろう。