最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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死刑と向き合う裁判員のために(3)

 6.日本が死刑を存置する理由 これは、ハワイ大學教授の論稿ですが、死刑が世界的にも、またアジア地域でも縮小・廃止される状況の中で、なぜ日本がなお死刑を存続し続けているのかという謎を、9つの仮説として描き出したものです。「歴史的解釈」としては、第2次大戦後の占領政策の中に死刑廃止が含まれず、保守的な自民党の長期支配が死刑存続を恒常化させたこと、また「外在的圧力」としては、アメリカの死刑存置論に従属し、アジアの地域連合がなお弱いこと、一方「内在的な力」としては、死刑に対する大衆的支持が贖罪と厳罰化を日本文化の特質として象徴していることを挙げ、結論として、これらの謎に迫る理論的・実践的な研究の必要性が示唆されています。
 7.韓国の国民参与裁判と死刑 これは、韓国清州大学教授の論稿ですが、韓国では死刑制度は存置されているものの、1997年に、存置論と廃止論の妥協の産物として、死刑の執行が停止され(死刑モラトリアム)、その状態がすでに10年以上も定着し、現政府が保守政権にもかかわらず、その政策は今後もほとんど変わらないであろうといわれています。2008年から国民参与裁判制度が導入されましたが、選択制の陪審制度の下で、陪審裁判の無罪率が高いほか(8.8%)、取調べの全面的な録音・録画が行われていることも参照に値するところです。
 8.国際連合と死刑廃止 これは、アイルランド大学教授の論稿ですが、国際連合が内部の様々な機関や委員会を通じて、一貫して死刑の縮小と執行停止(モラトリアム)から廃止に向けて、さまざまな活動を続けてきた経緯を、実に丹念にフォローしたものです。日本政府がその国際的な活動に全く背を向けているのは淋しいことです。
 以上のほかにも、有益な指摘が多く含まれていますが、私としては、本書の叙述じたいが一般市民にはなお難しく、もっとやさしくできないかという感想を持ちました。
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by nakayama_kenichi | 2011-04-23 09:14