死刑と向き合う裁判員のために(3)
2011年 04月 23日
7.韓国の国民参与裁判と死刑 これは、韓国清州大学教授の論稿ですが、韓国では死刑制度は存置されているものの、1997年に、存置論と廃止論の妥協の産物として、死刑の執行が停止され(死刑モラトリアム)、その状態がすでに10年以上も定着し、現政府が保守政権にもかかわらず、その政策は今後もほとんど変わらないであろうといわれています。2008年から国民参与裁判制度が導入されましたが、選択制の陪審制度の下で、陪審裁判の無罪率が高いほか(8.8%)、取調べの全面的な録音・録画が行われていることも参照に値するところです。
8.国際連合と死刑廃止 これは、アイルランド大学教授の論稿ですが、国際連合が内部の様々な機関や委員会を通じて、一貫して死刑の縮小と執行停止(モラトリアム)から廃止に向けて、さまざまな活動を続けてきた経緯を、実に丹念にフォローしたものです。日本政府がその国際的な活動に全く背を向けているのは淋しいことです。
以上のほかにも、有益な指摘が多く含まれていますが、私としては、本書の叙述じたいが一般市民にはなお難しく、もっとやさしくできないかという感想を持ちました。