死刑と向き合う裁判員のために(2)
2011年 04月 21日
5.誤判と死刑 刑法の専門家の中にも、「誤判の場合に取り返しがつかない」という死刑反対の論拠は疑問であるとし、誤判の可能性が全くないような場合、たとえば無差別大量殺人が多衆が目撃する中で行われ、犯人が現行犯逮捕されたような場合には、死刑を認めざるを得ないのではないかという存置論が紹介されています。しかし、これに対しては、たとえそのような一見明白な殺人行為の場合であっても、誤判のおそれが全くないとはいえず、たとえば裁判の中で、犯人が精神異常によって責任能力が疑われる可能性も否定できない以上、最初から誤判の可能性が全くない事例があるという問題の立て方が間違っていると答えられています。
たしかに、誤判と冤罪の数は実際には少ないのですが、これを「やむを得ない例外」として認めのではなく、むしろ逆に、未来永劫にわたって誤判が絶対に存在しないという証明ができない以上、死刑を制度として存置することは正しくないといわれるのです。(続)