最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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中国の死刑の制限

 中国は、アメリカと並ぶ死刑大国であり、死刑判決数も死刑執行数も突出して多いことは、すでに周知の事実になっています。アムネスティ・インターナショナルの調査によりますと、2009年、アメリカの死刑執行数は52人で世界5位、日本は7人で10位であるのに対して、中国は1718人で、ダントツの1位です。
 しかも、在日の中国人専門家によりますと、本当の執行数ははるかに多く、2000人から1万5000人位もあるといわれ、中国政府はその数字を公表せず、むしろ最高の国家秘密になっているのが現状です。しかし、さすがに中国でも、国内外の批判に答えるために、最近の刑法改正で、死刑の罪名の削減が行われました(王雲海「中国の刑法改正と死刑制度の変更」法律時報83巻4号118頁、2011年4月)。その要点は以下の通りです。
 1.中国の1979年の刑法典では、死刑罪名は28個であったが、1997年の刑法典では68個に増加した。その特色は、殺人などの人身犯罪よりも、政治犯罪(国家安全危殆罪)や経済犯罪(経済秩序破壊罪)が多い点にあり、実際にも、殺人のほか、麻薬犯罪や横領収賄などの公務員犯罪に死刑が多く適用されている。
 2.2011年の刑法改正は、68個の死刑罪名を55個まで減少させたが、実際には死刑が外された罪はほとんど死刑の適用がなかったものであり、75歳以上の高齢者への死刑制限措置も含めて、形式的で名目的な改正にとどまる。
 3.それよりも、死刑の罪名の制限の反面として、非死刑犯罪の併合罪の刑が重くなり、2年の執行猶予つき死刑の猶予後の減軽が禁止されるなどの厳刑化傾向が見られる。
 以上の分析から、王教授は、本当に死刑制度を改善するためには、実質的な内容に踏み込むことが必要で、何よりも重要なのは、死刑判決数や執行数を隠すのをやめ、中国社会全体を死刑への固い迷信から解放することにあると結論されています。
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by nakayama_kenichi | 2011-04-10 09:09