最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

学会回顧

 毎年12月になりますと、法律学界でも1年間の研究業績の回顧が行われるのが恒例になっていますが、今年も、法律時報(1929年創刊の法律雑誌)の12月号が「2010年学会回顧」の特集号として出版されました。
 まず、400頁を越えるずっしりと重い分厚さに圧倒される思いがしますが、これはもう最近の傾向なので、特別に驚きません。しかし、それにしても、かつて私どもの現役時代(20-30年前)と比較しますと、年々分厚くなって行く外形的な変化には改めて目を見張るものがあります。
 その最大の原因は、大學や学部が増えて、教員も増加し、とくに若い研究者の手になる研究業績(論文、翻訳、紹介等)の数が増加しつつあるという点にあるといえるでしょう。応用や比較を含めた研究分野の広がりも相乗作用となっているものと思われます。
 たしかに、そのような量的な増加現象は歓迎すべきものといえるでしょうが、問題がないわけではありません。そのいくつの点を指摘しておきたいと思います。
 第1は、量の増加が質の低下をもたらしているのではないかという危惧です。これには、学部やロースクールでの教育と管理運営の比重が研究時間を圧迫するという最近の状況の中で、文科省が研究業績の「数」を評価の対象にしている点も影響を及ぼしていると推測されます。
 第2は、その結果として、比較法を含む基礎的な研究よりも、判例解説的な論文が多くなり、学界や実務界にインパクトを与えるような大胆な問題提起や問題意識そのものが育成されにくい環境が定着しつつあるように思われます。
 第3は、ロースクールと裁判員法が真の「司法改革」の展望を持ち得ないことが、法学研究の在り方にも影を落としているのではないかという点です。文科省と法務省に物申すというくらいの気概を大學と学界に期待したいものです。
[PR]
by nakayama_kenichi | 2010-12-05 08:42