文楽の一日
2010年 11月 10日
午前11時から公演が始まり、午後1時過ぎから30分間の昼食休憩があっただけで、全部が終わったのは午後3時半過ぎ、正味4時間の公演のあと、終わって帰宅したのが午後5時半頃ということで、すっかり「文楽漬けの一日」となりました。
私自身は、文楽には疎いのですが、大橋正叔教授の解説によりますと、人形浄瑠璃には「時代物」と「世話物」があり、今回は両方を見たことになります。
「嬢(むすめ)景清八嶋日記」では、日向嶋に流人となった悪七兵衛景清を、乳母の死によって父と知った娘糸滝がわが身を女郎屋に売って、父を訪ねる。娘の犠牲による「孝心」に景清の剛直孤高な平家の「武士としての我」が揺れる。源氏に仕えることを不忠とする景清は糸滝を追い返すが、残された金が娘の身を売った代金であることを知り、結局は、娘の身を思い上洛(鎌倉)を承知するというのが、筋書きです。
一方、「近頃河原の達引」では、お尋ね者伝兵衛を思い切らせようと、母と与次郎はおしゅんに離縁状を書かせるが、それは伝兵衛との心中を覚悟した置き書であった。訪ねてきた伝兵衛はおしゅんの貞節を知り、母と兄の嘆きを思い、1人で死ぬことを告げる。「そりゃ聞こへませぬ伝兵衛様」で始まるおしゅんの口説きが有名で、結局は、母も兄も猿回し祝言の寿で2人に祝言の盃をさせ、死出の道行きへと送り出すというのが、筋書きです。
なお、私じしんは、前の話で、平家の武士の景清が最後のところで、なぜ源氏に帰服したのか疑問に思いましたが、3段目でなく、5段目では切腹して平家に義を立てて果てることになっているとのことです。ともあれ、人形使いと語り手は立派でした。