最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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規範意識のキーワード

 「規範意識のキーワード」とは、法務省当局が凶悪・重大犯罪の法定刑の大幅な引き上げを提案し、法制審議会を通り、国会も通過した最近の「刑法一部改正」の際に、刑罰を加重する根拠として繰り返し提起されたもので、国民の正義観念とか、被害者の処罰感情、処罰要請などを総称する「打出の小槌」を意味する。
 強姦罪の法定刑の下限を2年から3年に引き上げるのも、殺人罪の下限を3年から5年に引き上げるのも、傷害致死罪の下限を2年から3年に引き上げるのも、傷害罪の上限を10年から15年に引き上げるのも、また有期自由刑の上限を15年から20年に引き上げるのも、加重する場合は30年に引き上げるのも、さらに公訴時効の期間の最高を10年から25年に延長するのも、すべては国民の規範意識が要求しているからだというのである。
 国民の平均寿命が延びたからという理由も挙げられていたが、これは自由を拘束されている期間の価値も高まったという反論にあって相殺されたあとは、もっぱらこの規範意識のキーワードが繰り返し主張された。凶悪・重大犯罪が増えているので、世論に答えるためだと言われれば反論も難しいように思われるが、果たして犯罪が増えているのかも問題だという意見もあるほか、重罰化しても犯罪抑止の効果があるのかも疑わしく、ただはっきりしているのは刑務所の過剰収容をますます促進することだけであるということになりかねない。
 刑法学者は、刑罰論を再検討しなければならないはずであるが、法制審議会の学者委員がすべてこの引き上げ案に賛成したというのも不思議というほかはない。
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by nakayama_kenichi | 2005-04-17 19:46