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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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明治26年の「日本修身書」

 過日、墓参りで田舎に帰京しました折に、古文書を多く持っておられる方から、明治26年(1893年)に発行された、当時の尋常小学校の「日本修身書」のコピーを頂きました。この本は、明治26年9月18日文部省検定済、渡邊政吉著『実験・日本修身書、巻一、尋常小学生徒用』東京金港堂の出版物です。
 第1課(父母の恩)から始まって、第20課(忍耐)に至るまで、毛筆の大きなひらがな書きで、各課の最初には、繊細な挿絵が描かれています。内容的には、父母の恩と孝養から、兄弟、朋友と続き、あとは一般的な処世訓となっています。天皇の恩や臣民の義務という項目は見当たりません。以下、そのなかのいくつかをそのまま引用しておきます。
 「言(コトバ)をつつしまざれば、わざわいをひきおこすことあり。勇作が、きゃくの心をそこなひたるをみても、これをしるべし。わざわいは、口よりおこる」(第8課 言語)
 「あらそわざるは、人にまじわるのみちなり。徳太郎は、おこないただしくして、人とあらそひたることなかりければ、つひに人にうやまわれたり」(第11課 温和)
 「板倉重昌は、けらいのために、たいせつなゆみををられたれども、すこしもいからず、かえりてその人をなぐさめたり。かんにんの、なるかんにんは、たれもする、ならぬなんにん、するがかんにん」(第11課 弘量)
 「宇右衛門夫婦は、いふくたはたをうり、うえたる人をたすけ、またそのむすめも、いふくをぬぎて、こご江たる人にあたえたり。己あたたかなりとも、人のさむさをおもふべし」(第17課仁慈)。
 「むかし小野道風といへる人あり、かはづの、やなぎの江だにとびつきたるをみて、しんぼうのたいせつなることをさとり、てならいをはげみて、なだかきてかきとなりたり。おこたらざれば、なにごともなる」(第20課 忍耐)。以下、略。
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by nakayama_kenichi | 2010-08-16 13:02