最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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刑法の過去と未来

 最近、ある法律雑誌から依頼されて、最近の立法問題について、「刑法と少年法の改正の流れ」と題する原稿を書く機会があり、改めて考えさせられました。
 「刑法」は、1907年(明治42年)に制定された古い法律ですが、戦前の「不敬罪」や「姦通罪」が戦後廃止されたことや、文言が口語体になった点などを除きますと、それほど大きな改正はなく、ほぼ安定していたのです。ところが、とくに2000年以降の最近の10年間に、大きな改正が顕著に現れるようになりました(立法活性化の時代)。
 第1は、最近の電子情報社会化に対応するもので、コンピュータのパスワードの不正入力を等処罰する「不正アクセス禁止法」(1999年)のほか、不正なカードの所持やカード情報の提供等を処罰する「支払い用カード電磁的記録に関する罪」(2001年)などです。
 第2は、国民の安全と不安感の除去を目的とするもので、ドライバーの携帯等を処罰する「ピッキング防止法」(2003年)や「広島県暴走族追放条例」(2002年)のほか、とくに交通関係では「危険運転致死傷罪」の新設(2001年)や道路交通法上の「救護義務違反罪」の刑の加重(2008年)などです。
 第3は、とくに近年における凶悪・重大犯罪の実情に対処するために、刑法上の重要な多数の犯罪について、その「法定刑」を大幅に引き上げるという改正です(2004年)。
   以上の「改正」は、まさに「犯罪化」と「重罰化」の方向にあることは明白ですが、それが時代環境と社会意識の変化(被害者の保護と市民生活の安全)に対応するものといわれている点に注目する必要があります。
  しかし、とくに第2と第3のような「犯罪化」と「重罰化」は、刑務所の過剰収容をさらに悪化させるとともに、何よりも、刑法の伝統的な基本原理(自由と人権の保障、刑法の謙抑性と補充性、法益保護原則など)を掘り崩して行く危険があり、警戒が必要です。
   ドイツでも同様な状況が見られますので、次回はハッセマー教授の所説を紹介します。
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by nakayama_kenichi | 2010-04-21 13:20