Penal Populism
2009年 11月 25日
最近では、犯罪に対する「厳罰化とポピュリズム」の関係が問題とされ、現に国際的規模における本格的な比較研究の業績が注目されています(『グローバル化する厳罰化とポピュリズム』日本犯罪社会学会編、2009年)。その中心的な指摘を引用しておきます。
「Penal Populismとは、『法と秩序』の強化を求める市民グループ、犯罪被害者の権利を主張する活動家やメディアが、一般市民の代弁者となり、政府の刑事政策に強い影響力を持つようになる一方で、司法官僚や刑事司法研究者の意見が尊重されなくなる現象である」。「犯罪や刑罰の議論において、社会科学における研究成果よりも、むしろ個人的な体験、常識や逸話(体験談)といったものが重視されるようになり、人々は、複雑な問題に対して、分りやすく常識的な言葉で解決策を語る者に対する信頼感を高めていく」。
以上は、世界の主要先進国に共通に進行しているように見える厳罰化とポピュリズムの関係を示唆しているものですが、とくに日本における厳罰化の傾向について、実際には犯罪が低い水準にあり、増加していないにもかかわらず、死刑や無期刑が増加し、刑期が長期化している国として国際的にも注目されているという状態にあります。
たとえば、殺人の被害者数が減少しているにもかかわらず、死刑判決の数は目立って増加する傾向が見られます。ヨーロッパでは死刑制度が廃止され、韓国でも死刑は執行停止の状態が続行中で、アメリカでさえ減少傾向にあるにもかかわらず、日本の世論調査では80%以上の国民が廃止に反対であることが死刑存続の大きな理由とされています。
このような状況の中で、「死刑事件」にかかわる裁判員が「死刑」にどう対応するのかという点が試金石として注目されるところです。