最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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公務員の服務規律違反と犯罪行為


 国家公務員法102条と人事院規則14-7は、公務員の政治的行為を禁止するとともに、その違反に対して、3年以下の懲役または10万円以下の罰金を科している。人事院規則に違反する行為は、本来は公務員の服務規律違反として懲戒処分の対象になるものであるが、人事院規則違反を理由とする懲戒処分が争われた例はきわめて少ない。
 ところが、その全く同じ行為が「犯罪」として処罰されることになっているので、警察の捜査の対象となり、起訴される可能性があり、実際にはこの方の適用事例が多く、これまで深刻に争われてきたのである。
 しかし、そもそも同じ行為が懲戒処分にも刑罰にも当たるというのは、おかしいのではないかという根本的な疑問がある。せめて、軽い方が懲戒処分に、重い方は刑罰に当たるという区別をするというのであれば、その限界の不明確さという問題は残るものの、まだ分からないわけではない。しかし、猿払事件の最高裁判決(昭49)は、その区別すら認めない一律処罰の合憲性に固執しているのである。
 では、その「保護法益」は何かといえば、それは公務員の政治的中立性に対する国民の信頼であって、それは「国民全体の共同利益」であるというのである。しかし、その実体はきわめて抽象的なものであって、「法益の侵害」の存否と程度を具体的に確定することは不可能である。むしろ、その背景には公務員の「忠誠義務違反」が予定されているようにさえ思われる。
 公務員が賄賂を収受したり、職権を濫用して人を逮捕したりする行為が「犯罪」であることには全く異論がないとしても、公務員が休日に選挙ビラを配布するような行為も「犯罪」として処罰するというわが国の現在の法状況には、もっともっと疑問を提起し続けなければならない。
 現に川口教授のコメントによれば、ドイツでは公務員の政治的行為の規制からは刑罰は一切排除されており、懲戒処分についてもヨーロッパ人権裁判所による制限的な運用が定着しているといわれているので、わが国の法制は国際基準の観点からも再検討を迫られているというべきであろう。
 
 
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by nakayama_kenichi | 2005-03-26 14:39