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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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正犯と共犯

 裁判員法が施行されてからは、素人の裁判員が刑事裁判に参加して、裁判官とともに、「事実認定」のほか「法令の適用」や「刑の量定」もしなければならなくなりましたので、単なる「社会常識」だけでは不十分で、ある程度の法的な制度の枠組みや法律用語についても一定の知識と理解が要請されることになります。
 そのために、「裁判員のための法律知識」のやさしい解説書が出版されるようになりましたが、問題は、法律用語が一般になじみが薄く、素人の常識からは理解できないような「難解」なものがなりあるという点で、そのやさしい解説といっても、法学部の学生にすら難しいことが、一般の人に理解可能かというジレンマがあります。
 たとえば、2人以上の者が共同して犯罪を行ったという場合が「共犯」と呼ばれることについては、一般の理解があるといってようでしょうが、「正犯」という用語がでてくると、途端に人々はそれが何を意味するのか、おそらく分らないと思います。「正しい犯罪」というのもおかしいでしょう。実は、「正犯」というのは、ドイツ語の Tater のことで、犯罪の「実行者」を意味します。つまり、自ら犯罪を実行した者が「正犯」で、これに加担する者が「共犯」という分け方です。
 そこから、日本の現行刑法は、2人以上共同して犯罪を実行した者が「共同正犯」、人を教唆して犯罪を実行させた者が「教唆犯」、正犯を幇助(援助)した者が「従犯」という形で共犯の類型を定めています(刑法60条以下)。
 ところが、お隣の中国では、「共犯」という用語は使われず、「共同犯罪」という名の下に、犯罪集団を指導した者を「主犯」とし、補助的な役割を果した者を「従犯」とした上で、「教唆犯」の規定も設けています。ここでは「正犯と共犯」ではなく、「主犯と従犯」という区別の方法が採られています。そのような分類の相違と関係について、今度中国へ行って話してくる予定です。
by nakayama_kenichi | 2009-10-13 09:59