正犯と共犯
2009年 10月 13日
そのために、「裁判員のための法律知識」のやさしい解説書が出版されるようになりましたが、問題は、法律用語が一般になじみが薄く、素人の常識からは理解できないような「難解」なものがなりあるという点で、そのやさしい解説といっても、法学部の学生にすら難しいことが、一般の人に理解可能かというジレンマがあります。
たとえば、2人以上の者が共同して犯罪を行ったという場合が「共犯」と呼ばれることについては、一般の理解があるといってようでしょうが、「正犯」という用語がでてくると、途端に人々はそれが何を意味するのか、おそらく分らないと思います。「正しい犯罪」というのもおかしいでしょう。実は、「正犯」というのは、ドイツ語の Tater のことで、犯罪の「実行者」を意味します。つまり、自ら犯罪を実行した者が「正犯」で、これに加担する者が「共犯」という分け方です。
そこから、日本の現行刑法は、2人以上共同して犯罪を実行した者が「共同正犯」、人を教唆して犯罪を実行させた者が「教唆犯」、正犯を幇助(援助)した者が「従犯」という形で共犯の類型を定めています(刑法60条以下)。
ところが、お隣の中国では、「共犯」という用語は使われず、「共同犯罪」という名の下に、犯罪集団を指導した者を「主犯」とし、補助的な役割を果した者を「従犯」とした上で、「教唆犯」の規定も設けています。ここでは「正犯と共犯」ではなく、「主犯と従犯」という区別の方法が採られています。そのような分類の相違と関係について、今度中国へ行って話してくる予定です。