最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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刑法学会60周年

 昨年5月のブログを見ますと、神戸の国際会議場で開かれた日本刑法学会が60周年に当たると記していましたが、実は今年の5月30日・31日に東京の明治大學で開催された刑法学会が正確には60周年に当たるとのことです。私は今年も、参加してきました。
 その上に、今回は、現在の刑法典が明治40年(1907年)に出来てからほぼ100年に当たり、当時の明法寮を含む刑法典の編纂事業にゆかりのある明治大学で開催されたこともあって、この100年間に及ぶ歴史的な回顧と将来の展望を語るというスケールの大きい有意義な企画が構想されました。また、ドイツから、著明な3人の刑事法学者が招聘されて、講演をされ、日独の比較と国際協力の必要性が共通に指摘されました。
 日本の刑法と刑事訴訟法の100年の歩みについては、私どもの昭和初め生れの同僚として、西原春夫、松尾浩也の両氏が報告を担当されました。とくに西原さんが、刑法の日本的特色という点とともに、戦後のマルクス主義をめぐる私との論争に言及されましたので、私としても、この論争について、改めてコメントをしなければなりません。
 一方、ドイツ人の講演では、とくにハッセマー教授が、ドイツ刑法の過去・現在・未来を語られた中で、ドイツでも現在では「自由のパラダイム」の犠牲の上に「治安のパラダイム」が日々に進行しつつあるというきびしい現実を直視した上で、将来への選択肢としては、そのような危険社会の現状に対しても、人格性と寛容という視点に基づいた刑法原則を維持すべきであると明言された点に、共感を覚えました。
 私は最後に質問し、日独の共通面を認めた上でも、日本が死刑を維持している点に決定的な相違があることを指摘し、教授のコメントを求めましたが、ドイツでも一時凶悪事件が連続発生した際に死刑復活の動きがあったものの、現在は落ち着いており、死刑は本来維持すべきでなく、廃止すべきだと明言されました。因みに、ドイツはナチス崩壊後の戦後当初にすでに死刑を廃止しており、日本は戦後の民主化の時期にチャンスを失したのが今日まで響いていると思います。
 
 
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by nakayama_kenichi | 2009-06-01 10:49