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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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臓器移植法案への疑問

 臓器移植法の改正問題が浮上してきたことについては、最近も触れましたが、新聞報道では、臓器移植法改正案を審査する衆院厚生労働委員会の小委員会が4月21日午前に開かれ、臓器移植に推進の立場と慎重な立場の6人の参考人が意見を述べたが、子どもの臓器提供などについて、参考人の意見が分かれたとのことです。
 そして、自民党の国会対策委員長は、21日の党の会合で、「5月11日から始まる週に、本会議で各議員の意見をお伺いする機会を持つようにしたい」と述べ、大型連休明けにも衆院本会議で党議拘束をかけずに採決する意向を明らかにしたといわれています(朝日4月21日夕刊)。
 従来のA案(脳死を人の死とし、家族の同意で足りる)、B案(適用年齢を15歳から12歳に下げる)、C案(脳死の判定条件を厳格化する)以外に、超党派の新案として、「家族の同意があれば「人の死」として提供できる」というD案が検討中とのことです。
  このうち、A案がもっともすっきりしたものですが、「脳死」を一律に「人の死」とすることへの社会的合意がないという問題をかかえているので、新案が急遽作られたものと見られます。しかし、本人のドナーカードによる意思表示がなくても、家族の同意があれば、なぜ本人の「脳死」が「人の死」となるのかという点が今よりもさらに説明困難になるという本質的な難点をかかえています。「脳死は人の死か」という根本問題を回避したままの政策的な法案をともかくも急いで通してしまおうというのでは、これまでの論議とも整合せず、その場逃れの無責任な立法態度として将来に禍根を残すことになるおそれがあります。
by nakayama_kenichi | 2009-04-21 21:24