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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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迫力を欠く有罪判決

 3月9日(月)午前10時から大阪地方裁判所で、私も弁護人に加わっている刑事事件の判決公判がありました。公判開始前の緊張感の直後の裁判長の第一声は、被告人を懲役4年6月に処するという低い声で、弁護団が期待した無罪判決は得られませんでした。
 あとは、裁判長が判決理由の要旨を淡々と読んで行くのですが、その時間も比較的短いもので、法廷には冷たい空気が流れたままで終わりました。それは、事件の事務的な処理を思わせるもので、これが「人を裁く」ことなのかという疑問と深い挫折感を覚えました。
 この事件は、被告人が最初から否認を続け、自白も勾留もなく、最初は業務上過失致傷罪で不起訴になったものが、その後の1人の目撃証言を唯一の証拠として、故意の「危険運転致傷罪」に格上げして起訴されたもので、検察官の立証に熱意が感じられない反面、弁護側が多くの弾劾証拠をあげて、全力をあげて取り組んだものです。
 裁判所は、証拠調べには丁寧に対応したものの、最終の判決には、なぜか「迫力」も「説得力」もなく、これで被告人や弁護人の真摯な訴えに正面から答えたのか、答えようとしたのかという疑問が消えず、残念でなりません。有罪と決めた上で、その理由を説明するだけならば簡単なことですが、それが「合理的な疑いを超える」確信であれば、もっと「迫力」のある説得的な論証ができたはずだと思われてなりません。
 警察や検察の手抜きや不手際については、とり立てて問題にしないという甘い姿勢にも、この種の有罪判決の特色が見られるようです。控訴審に向けて、無罪判決を獲得することの困難さを、あらためて自覚させられた次第です。
by nakayama_kenichi | 2009-03-10 16:06