迫力を欠く有罪判決
2009年 03月 10日
あとは、裁判長が判決理由の要旨を淡々と読んで行くのですが、その時間も比較的短いもので、法廷には冷たい空気が流れたままで終わりました。それは、事件の事務的な処理を思わせるもので、これが「人を裁く」ことなのかという疑問と深い挫折感を覚えました。
この事件は、被告人が最初から否認を続け、自白も勾留もなく、最初は業務上過失致傷罪で不起訴になったものが、その後の1人の目撃証言を唯一の証拠として、故意の「危険運転致傷罪」に格上げして起訴されたもので、検察官の立証に熱意が感じられない反面、弁護側が多くの弾劾証拠をあげて、全力をあげて取り組んだものです。
裁判所は、証拠調べには丁寧に対応したものの、最終の判決には、なぜか「迫力」も「説得力」もなく、これで被告人や弁護人の真摯な訴えに正面から答えたのか、答えようとしたのかという疑問が消えず、残念でなりません。有罪と決めた上で、その理由を説明するだけならば簡単なことですが、それが「合理的な疑いを超える」確信であれば、もっと「迫力」のある説得的な論証ができたはずだと思われてなりません。
警察や検察の手抜きや不手際については、とり立てて問題にしないという甘い姿勢にも、この種の有罪判決の特色が見られるようです。控訴審に向けて、無罪判決を獲得することの困難さを、あらためて自覚させられた次第です。